1. 地方創生で求められる“伝える力”
人口減少、高齢化、地域経済の縮小。日本各地の自治体や地域企業が抱える課題は多岐にわたります。こうした課題に取り組むための「地方創生」政策が展開される中で、**本質的に求められているのは“伝える力”**です。
いくら素晴らしい地域資源や企画があっても、それが「知られていない」「伝わっていない」ままでは、価値はゼロに等しくなってしまいます。
なぜ「伝えること」が重要なのか?
- 地域の魅力を外部に発信し、人を呼び込むため
- 地元の人々に“誇り”や“再発見”を与えるため
- 行政・企業・住民の連携を深めるため
プロモーションはただの宣伝手法ではありません。地域の資源・魅力・想いを、「誰に」「どう伝えるか」という設計思想が、地方創生を前に進めるカギになります。
2. 地域資源を魅力に変えるプロモーションとは
地域には数え切れないほどの“資源”が存在します。自然、文化、特産品、人材、歴史、ストーリー。
しかし、それが「魅力」として受け取られるかどうかは、伝え方=プロモーション設計にかかっています。
例:温泉地のプロモーション比較
A市 | 「源泉掛け流し・歴史ある温泉地」 |
---|---|
B市 | 「悩みを癒やす“人情”温泉街の物語」 |
内容は似ていても、伝え方が違うことで人の心の動き方がまったく変わります。
プロモーションでは次の視点を持つことが重要です:
- 地域資源を“体験価値”に変換すること
- 表面的な情報でなく、“なぜ”を伝えること
- 地域の人が語り手になること
一方的な情報発信ではなく、「共感」「共創」を軸にしたストーリー性のある設計こそ、魅力が伝わる広報なのです。

3. 地元住民×観光客それぞれの視点で考える
プロモーションでは「誰に伝えるか」が非常に重要です。特に地方創生においては、地元住民と**外部(観光客・移住希望者など)**の2つの視点を分けて考える必要があります。
地元住民へのプロモーション
目的:地域愛を育てる/自分ごと化してもらう
手法例:
- 地元の人を主役にしたSNSや動画コンテンツ
- 学校との連携による出前授業
- 住民参加型の広報イベント(街歩き、撮影など)
→ 「うちの地域ってすごい!」という誇りと愛着を醸成
外部ターゲット(観光客・移住者など)へのプロモーション
目的:関心→訪問→ファン化
手法例:
- 観光ポスターではなく“人”に焦点を当てた動画
- 移住者インタビューを活用したブログやSNS
- デジタル×リアルで体験価値を届けるキャンペーン
→ 「行ってみたい」「住んでみたい」という共感と期待を喚起
4. 成功している自治体・企業のプロモ例
● 熊本県南小国町「SMO南小国」
自治体と地域事業者が一体となって設立した観光地域づくり法人。住民インタビューや観光情報を、ストーリー仕立てでSNS配信。観光客数増加と住民満足度の向上を実現。
● 宮崎県「日向市 移住プロモーション」
若者移住を狙ったSNSプロジェクト「ひゅうが暮らし」。移住者自身がYouTubeで**“リアルな日常”を発信**し、他自治体のモデルにも。
● 秋田県横手市の老舗酒造
クラウドファンディング×Instagramで**若手社員が語る“蔵の未来”**を発信し、全国から支援と注文が殺到。伝統と現代性の融合が話題に。
→ 共通点:人を見せる・リアルを伝える・ストーリーがある
5. 情報発信と現地体験のバランス
プロモーションはオンライン完結だけでなく、現地での体験と連動させることで、本当の意味でのファン化が進みます。
情報発信(デジタル)
- SNSでの動画投稿
- Webメディア記事・インタビュー
- ハッシュタグキャンペーン
目的:関心を持ってもらう・“最初のきっかけ”をつくる
現地体験(リアル)
- 地域イベント/体験型ワークショップ
- モニターツアー/企業見学
- 住民との交流施策
目的:実体験で魅力を実感し、記憶に残す・“関係人口”化
→ 情報発信で呼び込み、現地体験で“記憶と関係”を生むという流れを設計することが鍵になります。
6. まとめ:地域の“ファン”を増やす広報術
地方創生は、ただ物を売る・人を呼ぶだけでは成功しません。
その地域に関心を持ち、“好きになる人”を増やすこと=ファンづくりが最も重要です。
そのために必要なのが、**プロモーションという「共感のデザイン」**です。
- 地域資源を再編集する力
- 人のストーリーを語る力
- 外からの視点と地元の想いをつなぐ力
これらを取り入れたプロモーションこそ、地方の価値を伝え、未来を動かす広報術となるのです。