これまで、広報は「社外への情報発信」を担う立場と見なされがちでした。しかし現在では、その役割は大きく進化しています。企業の未来を左右する重要なファクターとして、広報は経営戦略の一部に組み込まれ始めているのです。
特に注目すべきは、広報人材が“自走力”を持ち、戦略を理解しながら行動できる状態をどう育てていくか。そして、社内外のリソースをどう活用し、広報を企業成長の推進力に変えていけるか。
本記事では、経営視点で広報に求められる役割と、それを支える人材育成・設計の実践法を解説していきます。
1. 広報を「経営戦略の一部」として捉える
経営における広報の再定義
広報はもはや、単なる情報発信機能ではありません。今や「ブランドづくり」「採用強化」「事業認知」など、経営戦略そのものと密接に関わる領域となっています。

たとえば、新規事業を立ち上げる際、広報が社内外の理解を得る仕掛けを設計できるかどうかで、立ち上がりのスピードは大きく変わります。さらに、企業ミッションを明確に社会へ伝えることができれば、顧客や人材の共感を得ることも可能になります。
言い換えれば、「何を言うか」ではなく、「なぜそれを今伝えるか」までを考えるのが戦略広報です。
共通ゴールを持つ経営と広報
また、経営層と広報チームが異なるゴールを持っていては、発信の軸がぶれてしまいます。
たとえば、経営層が掲げる“中長期ビジョン”と、広報が日々の発信で目指す“関係構築”を整合させる必要があります。
そのためには、広報担当者が経営会議に参加し、共通言語を持つこと。逆に経営者が、広報を「伝える専門家」として対等なパートナーと見なす姿勢も必要です。
2. 広報人材の“自走力”を育てる環境づくり
なぜ自走力が必要なのか?
変化の激しい時代において、広報には柔軟でスピーディな対応が求められます。ゆえに、「指示待ち」の体制では乗り遅れてしまうリスクがあります。
そのため、考えて動く“自走する広報人材”が組織を強くするカギとなります。
自走力を育てる3つの環境整備
① KPIの見える化と目的共有
「なぜこの発信をするのか」「この数字はどのように経営とつながるのか」など、目標と成果を日常的に可視化することが重要です。
単なる成果評価だけでなく、「思考の筋道」まで共有することで、判断力と行動力が磨かれます。
② 小さな成功を任せる
いきなり大きな案件を任せるのではなく、SNS投稿1本、社内報1記事など、小さな単位から実践の場を与えます。そして成果が出た際には、全体で称賛する文化も必要です。こうした積み重ねが、“成功体験”として自信と主体性を育みます。
③ フィードバックの仕組み化
単なる評価ではなく、「次に活かせるフィードバック」を日常的に取り入れましょう。ポイントは“結果”だけではなく、“過程”に目を向けることです。
「こういう考え方は良かった」「この視点も加えるともっと良くなる」など、行動・思考・結果を分けて伝えると、本人の納得感が高まります。

3. 外部パートナー・PR会社との連携術
広報はチーム戦。社外の力も戦略的に使う
すべてを社内で完結する必要はありません。むしろ、専門知識やネットワークを持つ外部パートナーと連携することで、成果が加速するケースも多々あります。
とはいえ、気をつけたいのは「丸投げ」にならないこと。経営戦略に基づいた広報を行うには、戦略設計と実行管理の主導権は社内にあるべきです。
成功する連携のポイント
- 目的・背景をしっかり伝える
単なる業務依頼ではなく、「なぜこの施策を行うのか」「何を実現したいのか」を共有しましょう。 - パートナーを巻き込む姿勢を持つ
情報発信だけでなく、企画段階から意見をもらい、一緒に進化させる関係性をつくることが重要です。 - 情報共有を仕組み化する
定例ミーティング、チャットツールの活用、進捗レポートなど、コミュニケーションの仕組みも整えましょう。
このようにして「外部を味方につける力」も、広報リーダーに欠かせないスキルのひとつです。
4. ブランディングと採用広報との連動
採用に効くブランディングとは
「ブランドは見た目ではなく、約束である」と言われます。
つまり、企業がどんな価値を提供し、どんな未来をつくろうとしているのか。これを言語化・可視化することこそが、広報の力です。
そしてそれは、採用においても非常に大きな力を発揮します。
- 企業の理念に共感する人材を引き寄せる
- SNSやインタビュー記事を通じて、リアルな企業文化を届ける
- 働く社員の姿を通じて、入社後の未来像を想像させる
外への発信が、内なる育成にもつながる
実は、こうしたブランディングは社外だけでなく、社内の意識改革にもつながります。
社員が「自社の価値」を再確認し、自分の仕事の意味や、会社とのつながりを再認識するようになるからです。
つまり、発信が人材育成にも連動する。これは、経営視点で広報を見るからこそ見えてくる成果です。
まとめ
広報はもはや、“伝える人”ではなく“つくる人”です。
その視点に立ったとき、広報活動は経営と密接につながり、組織全体を動かすパワーとなります。
今回ご紹介したように、
- 経営戦略と結びつけて考える
- 自走する人材を育てる
- 外部と連携して進化を加速させる
- ブランドと採用を戦略的に連動させる
これらの視点を実践することで、広報は「経営に効くチーム」へと進化します。
未来を見据えた広報づくりに、ぜひこの一歩を取り入れてみてください。
MONWORLDでは広報の育成のお手伝いも行なっています。広報をする人がいるけど、次の成長に向けて何もできていないと感じる経営者様や担当の方はいませんか?
そんなときは社外に依頼することも1つの方法です。