有名企業も観光資源もあるのに動かない地域
どの地域にも、その土地ならではの魅力や誇れる資源があります。たとえば、全国的に知られる大企業が本社を構える場所や、国内外から観光客が訪れる名所。しかし、そうした強みを持ちながらも、経済や話題の広がりが停滞している地域は少なくありません。
実際に、企業と観光がそれぞれ個別に活動しているだけでは、相乗効果が生まれにくく、地元全体への波及が限定的になってしまいます。さらに、情報発信が断片的で、地域ブランドとしての一貫性が欠けているケースも多く見られます。
では、なぜこのような状況が続くのでしょうか。原因としては、企業と観光セクターの連携不足、発信力の弱さ、ターゲット設定の不明確さなどが挙げられます。そして、これらを放置してしまうと、せっかくの資源が「眠れる宝」のまま、活かされないままになってしまうのです。
停滞を打破する企業×観光のプロモ戦略
ここからは、地域担当者がすぐに実践できる具体的な施策をご紹介します。ポイントは、企業と観光資源を結びつけ、地域ブランドを再構築することです。
1. 企業の持つ発信力と観光の魅力を掛け合わせる
まず、地元企業が持つブランド力や知名度を観光プロモーションに取り入れましょう。たとえば、地元企業が観光イベントのスポンサーになるだけでなく、商品のパッケージに観光地の写真や情報を掲載する方法があります。こうすることで、企業の商品が自然に観光PRの媒体となります。
さらに、観光施設側も企業と共同で限定商品やサービスを開発すると効果的です。例えば、有名菓子メーカーと観光名所がコラボして「限定パッケージ」を作れば、地元住民だけでなく旅行客の購買意欲も刺激できます。

2. 連動型イベントで地域全体の注目を集める
単発のイベントでは話題が一時的に終わってしまいます。そこで、企業と観光を巻き込んだ連動型イベントを計画しましょう。
例としては、地元企業が主催するスポーツ大会や音楽フェスを観光名所と同時開催するパターン。イベント会場で観光情報を発信したり、スタンプラリーで複数の観光スポットを巡らせたりすることで、来場者を地域全体に回遊させられます。
また、オンラインとリアルを組み合わせた企画も有効です。SNSでのライブ配信やハッシュタグキャンペーンと現地イベントを組み合わせることで、地域外の人にも魅力を届けられます。

3. 地域ブランドの再構築とストーリー発信
プロモーションの土台には、明確で魅力的な地域ブランドが必要です。そのためには、地域の歴史・文化・人々の思いを整理し、物語として発信することが重要です。
たとえば、単なる「温泉地」ではなく、「〇〇時代から続く職人の手仕事と温泉文化が融合した癒しの町」というように、背景を含めたストーリーを作ります。
この物語をSNSや観光パンフレット、企業の広報資料など、あらゆるチャネルで統一して発信することで、一貫した印象が形成されます。
4. 発信後の効果測定と改善
プロモーションはやりっぱなしにせず、効果を必ず測定しましょう。
イベント来場者数、SNS投稿の反響、売上増加、観光客数の変化など、複数の指標で成果を確認します。そのうえで、うまくいった施策は継続し、反応が薄かったものは改善します。このサイクルを繰り返すことで、プロモーションの質は着実に向上します。

5. 人材と組織の横断的な連携
企業広報担当者、観光協会、自治体、商工会などが一堂に会する横断的なプロモーション会議を定期的に開くこともおすすめです。
これにより、情報共有がスムーズになり、施策が重複せず相乗効果を発揮できます。また、担当者同士の信頼関係が強まることで、新しいアイデアやコラボ企画も生まれやすくなります。
【まとめ】地域資源を動かすのは「掛け算」の発想
企業と観光が個別に頑張るだけでは、地域全体の成長は限界があります。しかし、企業の発信力×観光の魅力という掛け算の発想を取り入れれば、眠っていた資源が一気に動き出します。
重要なのは、一貫したブランド設計、連動型のイベント企画、継続的な改善サイクルの3つを揃えること。そして、担当者同士が垣根を超えてつながることです。
まずは一歩を踏み出す
もし今、あなたの地域に有名企業や観光資源があるなら、それらを結びつける小さな企画から始めてみましょう。たとえば、企業の製品に観光情報を載せる、観光地で企業協賛イベントを開くなど、小さな一歩が大きな動きにつながります。
やがて、その動きが地域の経済を潤し、ブランド価値を高め、住民にも観光客にも愛されるまちづくりへと発展していくはずです。