はじめに
広報の仕事は、単なる情報発信にとどまりません。社会の中で企業がどう認知され、どう信頼されるかを左右する「企業の顔」としての重要な役割を担っています。そんな広報活動の中核を担うのが「広報チーム」。そして、そのチームを導き、育てる存在が「広報リーダー」です。
しかし、広報チームの育成は容易ではありません。個人のスキルだけで乗り越えられるものではなく、チームとして戦略的に機能するための「視座」「設計力」「巻き込み力」「適材適所の配置」など、幅広いマネジメント力が求められます。
この記事では、広報チームを真に機能させ、成果を出すために必要なマネジメントの視点とコツを、4つのテーマに分けて詳しく解説します。
1. 広報リーダーに必要な「視座」と「視野」
まず重要なのが、広報リーダーとしての「視座」と「視野」を持つことです。

視座:企業全体と社会を見る高さ
視座とは、物事を見る“高さ”のこと。広報リーダーには、単なる作業者やプレイヤーの目線ではなく、「経営層の視点」に立つことが求められます。
広報活動の本質は、単なる情報の発信ではなく、「企業の価値を社会にどう伝えるか」にあります。そのためには、経営目標やミッションを理解した上で、「今、なぜこの情報を発信すべきか」「この発信は誰に、どんな影響を与えるのか」といった全体像を捉える力が必要です。
視野:複眼的・全方位的な情報感度
一方で視野は“幅”のこと。SNSトレンド、競合企業の動き、業界ニュース、社内の他部署の課題など、多方面から情報を取り入れる力が求められます。
視野を広く持てば、広報のネタ探しも一層スムーズになり、関係者との連携も活発化します。広報は「情報のハブ」でもあるため、日々の観察力・収集力を磨くことが信頼されるリーダーへの第一歩です。
2. チーム育成に必要なKPIとOJTの設計
広報チームを育てるには、曖昧な期待だけではなく、具体的な指標や仕組みを整えることが重要です。ここではKPI(重要業績評価指標)とOJT(On the Job Training)の工夫に注目します。
KPI設計:目的に即した指標を持つ

広報活動は成果が見えにくい分野と言われがちですが、実は定量化できる項目も多く存在します。たとえば以下のような指標がKPIとして使われます。
- メディア掲載数/件数
- SNSのエンゲージメント数(いいね・シェア・保存数など)
- プレスリリースの開封率・クリック率
- オウンドメディアのPV数/CV数
- メディア・社外関係者からの問い合わせ件数
数値化することで、メンバーが何を目指せばよいのか明確になり、成長指標としても活用できます。
OJT設計:共に考える・磨く体制へ
OJTの質が、メンバーの成長を左右します。特に広報は「言葉」を扱う仕事。思考プロセスやニュアンスの差を、対話を通じて学ぶことが肝要です。
効果的なOJTのポイントは以下のとおりです。
- まずは一緒に原稿をつくる「共創型OJT」からスタート
- 完成物だけでなく「なぜその表現にしたのか」も丁寧に共有する
- フィードバックは「行動(具体)→理由→期待」の順番で伝える
リーダーが共に汗をかくことで、メンバーの主体性とスキルが自然に育まれていきます。
3. 社内を巻き込む力と、経営層との関係性構築
広報は単独で完結する仕事ではありません。社内外の協力を得る「巻き込み力」があってこそ、戦略的な発信が可能になります。
社内巻き込みのコツ
社内の他部署から「広報に相談してみよう」と思ってもらえる関係性づくりが第一歩です。実践的な工夫としては:
- 社内Slackなどで“広報ネタ募集中”の投稿を定期的に発信
- 部署横断の広報アイデア共有会を月1で開催
- 成果レポートを社内共有し、広報の効果を「見える化」する
また、「他部署の成功を広報が支援する」姿勢を示すことで、協力関係はより強固になります。
社長・経営層との信頼構築
経営層との距離が近いことも、広報リーダーの強みです。単なる報告で終わらせず、共にブランドをつくる「パートナー」としての意識を持ちましょう。
- 定例報告では、事実だけでなく「戦略ストーリー」を提案に組み込む
- 資料には図解やデータを盛り込み、意思決定の手助けを
- 社長の発言・思想を丁寧に拾い、外部発信に活かす
特に社長の“想い”を言語化・可視化できる広報は、経営に不可欠な存在として信頼されます。

4. 広報メンバーの強みを活かす配置と業務分担
広報の仕事は多岐にわたります。文章作成、SNS運用、撮影、インタビュー、資料づくりなど、ひとりでこなすには無理があります。だからこそ、メンバーの強みを活かす「適材適所の配置」が肝心です。
タイプ別配置の例

- インタビューが得意な人 → 社内取材・関係構築系
- 論理的思考に強い人 → リリース原稿、報告資料などロジカル系業務
- ビジュアル思考の人 → サムネ制作、Instagram運用、スライド作成
- 分析が得意な人 → SNSやPR施策の効果測定・改善提案担当
得意なことに注力することで、チーム全体のパフォーマンスは確実に上がります。
分担と共通ルールの設計
業務を「属人化」させすぎないためにも、次のような仕組みが有効です:
- プロジェクト型で役割分担と進捗管理(WBSやTrelloを活用)
- ルーティン作業はフォーマット化し、誰でも対応可能に
- 月に1回は「振り返り&知見共有MTG」でチーム全体の学びに変える
多様な力をひとつの方向へ向けるのが、広報リーダーの重要な仕事なのです。
まとめ
広報チームの成果を高めるために、リーダーには戦略的かつ人間的なマネジメントが求められます。
- 視座と視野を高め、全体最適の発信を考える
- KPIとOJTを通じて成長を支援する仕組みを整える
- 社内を巻き込み、経営層との信頼関係を築く
- メンバーの強みを活かし、最適な分担を実現する
広報は、組織の価値を社会へ伝える“信頼の架け橋”。その橋を強く美しく保つために、チームの力を引き出すマネジメントに、今日から一歩踏み出してみませんか?
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