1. 地域密着型広報とは?(地方企業に必要な理由)
地方企業にとって、広報は「大きな予算をかけて全国へ発信するもの」ではなく、**“地元とのつながりを深める手段”**として機能します。これが「地域密着型広報」です。
大都市と違い、地方では口コミや信頼の積み重ねが重要です。地域社会との関係性が深まれば、リピーターやファンが自然に増え、採用にも好影響を与えます。
さらに、地方企業は以下のような課題を抱えがちです。
- 人材の確保が難しい
- ブランド認知が限られる
- 地域内競争が激化している
これらを解決するために、広報で地元住民・自治体・メディアと良好な関係を築くことが、持続可能な成長の鍵となります。

2. 地域イベント・自治体との連携事例
広報は「発信」だけでなく、「関係づくり」の手段でもあります。その代表例が地域イベントや自治体との連携です。
● 地域のお祭りで企業PR(長野県の老舗味噌メーカー)
地元の夏祭りに毎年ブース出展し、オリジナル味噌汁のふるまいを実施。来場者との直接的な交流により、「親しみやすい企業」のイメージが定着。参加者のSNS投稿による波及効果も。
● 自治体との共同イベントで信頼性アップ(福井県のリフォーム会社)
空き家活用プロジェクトを自治体と共催し、「地域課題の解決に取り組む企業」として注目。自治体の広報誌やHPでも取り上げられ、住民からの問い合わせや相談件数が大幅に増加。
● 小中学校との連携で教育貢献(佐賀県の食品会社)
出前授業や工場見学を通じて、子どもたちに「地元企業の魅力」を伝える取り組みを実施。親世代からの企業評価も向上し、地域に根付いた信頼感が構築された。
このように、イベントや自治体連携は、信頼と共感を生むリアルな接点として機能します。
3. 地元メディアとの関係構築
地方においては、地元メディアとの関係性が企業の認知に大きな影響を与えます。
● 地方新聞・テレビ・ラジオの影響力
全国メディアに比べて、地元メディアは地域に根差した情報を求めています。企業のちょっとした取り組みでも、ニュース価値があれば積極的に取材されます。
● メディア向け情報の工夫
- 地域性のある話題にする(地元の食材・伝統・人材など)
- 社会課題との接点を伝える(空き家、少子高齢化、雇用)
- 写真・エピソード・背景説明を添えてリリースを作成する
● 記者との関係構築
1度掲載された後も、お礼の連絡や最新情報の共有を継続することで、次回以降も取り上げてもらえる可能性が高まります。
地元メディアでの露出は「信頼の証」として地域住民の信頼を得る大きなきっかけになります。
4. 住民・ファンを巻き込むプロジェクト例
地域密着型広報では、単なる「発信」だけでなく、住民を“参加者”にすることが重要です。
● 住民をモデルにする広告(岩手県の呉服店)
地元のおばあちゃんたちに着物を着てもらい、地域誌やSNSで紹介。「知っている人が載っている!」という反響から話題に。実際の来店率もアップ。
● ファンを巻き込んだ商品開発(香川県のパン屋)
地元住民から具材アイデアを公募して、新商品「みんなのカレーパン」を開発。採用者には商品券を贈呈し、SNSでも大きな話題に。
● 地域の困りごとを解決する企画(青森県の印刷会社)
高齢者の買い物困難をヒントに、「買い物代行ノート」を無料配布し、地域新聞で紹介。結果的に会社の認知度も大幅アップし、新規受注にもつながった。
これらの施策に共通するのは、地域の人々を“主役”として扱っている点です。
5. 地域のSNS活用術(観光地との連携など)
SNSは都市部だけのものではなく、地方でも効果的に活用できます。
● 地域の魅力をストーリーで発信
InstagramやTikTokで、「地元の風景」「食」「人」「企業の一日」などを映像とストーリーで伝えることで、観光客だけでなく住民の共感も得られます。
● 観光地との連携(山口県の菓子メーカー)
地元の観光名所とコラボし、「●●寺で食べたいおまんじゅう」としてパッケージと投稿を展開。観光協会とも連携し、商品売上が前年比180%に。
● ハッシュタグを地域で統一(愛媛県・地域連携型プロモ)
「#えひめ発信部」として、地元企業・住民・学生がSNS投稿で地域の魅力を伝えるプロジェクトを展開。投稿数は1年で3,000件超え、地域全体での盛り上がりを演出。
SNSはリアルな声と写真が“共感の拡散”を生むツールです。企業の投稿だけでなく、地域の人々の参加が成果を左右します。
6. まとめ:地方だからこそ活きる広報戦略とは
「都会と比べて予算も人も少ない」と感じがちな地方企業こそ、地域とのつながりを活かした広報で他社と差別化するチャンスがあります。
- 顔が見える距離感
- 住民との直接的な信頼関係
- 地元メディアの親近性
- 自治体との協働機会
これらは都市圏では得にくい、地方ならではの「強み」です。
情報を“伝える”だけでなく、“共に育てる”“地域の一員として発信する”という視点で広報を設計することで、企業も地域も持続可能な発展が可能になります。
地方だからこそ、できる広報がある。
それを活かせるかどうかが、これからの企業成長の鍵です。